2013年4月17日水曜日

水戸藩にいた鳥


 
(1)     幕末の水戸の絵師に描かれた鳥

 

  好文亭四季模様之図  亘セン幽

本図は、亘セン幽の筆になる偕楽園の鳥瞰図で、嘉永4(1851)年に彩色が加えられている。当時の偕楽園が細かく描かれているが、特にツルの仲間が図鑑のように描かれているのが目に付く。絵から見てタンチョウが、子に餌を与えている。タンチョウの近くには、ソデグロツルが描かれている。
 
  また、タンチョウの脇に、

「 靏  靏之休ミ所
 
  藤棚  見川村地

  嘉永四辛亥四月初子ヲウム 」の書き入れ付がある。

 

  偕楽園図

本図は、「幕末と明治の博物官報」(平成11年度)によれば、徳川斉昭が偕楽園の図の作成を園吏に命じ、完成されたものである。完成された絵は、斉昭に奉呈され、斉昭の「潜龍閣蔵書印」という蔵書印が押されている。絵の内容は、「好文亭四季模様之図」とほぼ同様である。

面白い事に、この二枚の絵を見比べてみると構図などは似ているが、描かれている鳥が違うのである。「偕楽園図」には、「好文亭四季模様之図」  に描かれているソデグロヅルは見当たらない。しかし、タンチョウの他にツルの仲間で、ナベヅルが偕楽園と桜山の間に描かれている。加えて、コサギと思われる鳥の群が田の中に描かれて、千波湖の湖面には白鳥類あるいはハクガンと推定されるもの、淡水ガモの仲間と思われる群れも浮いているように描かれている。 

現在は道路や芝生の広場となっている所に湿地帯があり、ここで絶滅が危惧されているタンチョウなどの水鳥たちがのんびりと餌をとる様子が興味深い。当時、ツルの仲間は、徳川家によって厳重に保護されていたのであるが、これらの絵においても、ツルは現在の図鑑で見ても種が特定できるほど詳しく描かれている。他の水鳥は種が特定できるほど詳しくなくカモの仲間程度しか特定できないことを見ても、ツルが特別大事にされていた事がわかる。水戸藩内の人々がツルを見る眼は、他の鳥と違っていたのであろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿